広大な土地にまちが点在する地理的条件、過疎化、少子高齢化と、北海道は大きな課題に直面しています。私自身20年以上物流を手がけ、北海道の経済の縮小を肌で感じてきました。とくに地方へ運ぶ物の量は減り、物流コストはアップ、競争力は低下し、さらに物が減るという負のスパイラルにおちいっています。このままでは物流が崩壊し、「物が届く当たり前」を守れない状況になりかねません。誰もがこのままではいけない、大胆な改革が必要だと気づいています。しかし、何をどうしたらいいのかわからないというのが現実でしょう。
私は、北海道が大好きです。北海道のどの地域にもいつまでも住み続けられる未来を諦めたくはありません。そして、その未来はふるさとを愛する地元の方々と一緒に描いていけると信じています。
私たちは、既存の概念に縛られない発想で物流システムを改革し北海道の未来を支えようと、様々な提言・提案、実証実験を進めています。ハブ&スポークからミルクラン方式への転換とモジュール化により、カテゴリー、サイズ、重量や温度帯の異なる商品を混載する地域共同配送を柱とし、コストを抑えて物を運ぶしくみを構築しています。
また、物流にもLCC(ローコストキャリア)の発想を取り入れることも考えています。 これは、ダイナミックプライシングを採用し、利用者がサービスレベルを選択できるしくみです。 「物が届く当たり前」を守るために、これまでになかった自由な発想が必要です。
「フィジカルインターネットの構築」が、私たちが掲げるビジョンです。道内から全国、海外へとスムーズにつながるしくみは、いうまでもなく北海道の経済活性化に重要な役割を果たします。実現には、エリア、業種・業態、官と民、あらゆる垣根を越えた連携が不可欠であり、モデルケースは社会全体で共有すべきものです。競争の時代は終わりました。厳しい時代を生き残り、未来を築くために必要なのは「協創」です。誰もが「株式会社北海道」の一員という意識をもてば北海道を元気にできます。私たちは、志を共にする方々と積極的に出会い、共に働き、豊かな北海道の未来へのチャレンジを続けていきます。
斉藤博之/さいとうひろゆき
北海道登別市生まれ。自動車整備士、自動車販売の営業を経て、24歳でトラックドライバーに。道外メーカーの商品を道内各地の卸業者に納品する2次物流を担当する中、同じ卸業者に届けるアイスクリームがメーカーごとにばらばらに物流拠点に運ばれてくることで、温度管理ができず品質劣化を招いていることに着目。1998年(平成10)29歳で北海道物流開発株式会社を起業、アイスクリームの「鮮度」を保つ共同配送のしくみをつくる。
ずっと住み続けられる北海道へ、人づくり、物流面から貢献すべく、ボーダーレスに活動中。札幌商工会議所青年部発足に尽力し、2016年(平成28)初代会長就任。また物流関係者が集う「北海道物流人倶楽部」を創設。
2019年12月明治大学BCP・SCM研究所客員研究員に就任。北海道食クラスター「地域フード塾」講師、「高校生チャレンジグルメコンテスト」実行委員など。